神奈川中央交通財政的攻略法

”特典バスチケットご提供額とご利用可

はじめに

この記事は、神奈川中央交通(以下「神奈中」)のバスを通学で使うとき、どのようにしたらお得か、ということについて考察した記事です。
が、湘南台23系統・24系統・25系統についてしか考えていないので、他の区間では多少違ってくるでしょう。


ただ、神奈中の定期を買うのはかなり得でない のはおそらく共通するはずなので、興味があるかたは検証してください。


あと文章量が少し多いですが、「まとめ」を見れば結果はわかります。

前提

  • 湘南台23系統のバス*1を、通学のために全区間1日1往復する。
  • 他の区間も乗ること(や、23系統で途中下車すること)は考えない。
  • 平日だけ往復し、土日は乗らない。
  • ディスカウントの券や、誰かにおごってもらうことも考えない。
  • 運賃支払いには、「バス回数券」「ICカード」「定期券」のいずれかを、1回の支払いにつき1種類のみ選択する(回数券とICカードを組み合わせて払う、といったことは考えない)。
基礎データ

片道運賃:210円

定期代: 通勤1ヶ月:9450円 通勤3ヶ月:26930円 通学1ヶ月7560円 通学3ヶ月21550円 (通学割引率:約20%)(3ヶ月定期:1ヶ月定期の約5%引)
出典:時刻表・運賃案内 | 利用者の皆さまへ | 神奈川中央交通

回数券*2: 3000円(で買える束):170円券*19 + 10円券*13 =3360円分 1000円(で買える束)その一:90円券*10 + 10円券*20 =1100円分 1000円(で買える束)その二:10円券*110 =1100円分

本題

一般的に、通学や通勤で特定区間を何度も往復するとき、定期券を購入すると大幅に安くなる。例えば、私が通学に利用している小田急電鉄は、通学定期券なら、最も割引率が低い1ヶ月定期でも月に10回程度乗れば元が取れてしまう*3


ところが、神奈中は、210円区間の定期代が月に7000円以上もする。大ざっぱに計算しても、34回以上乗らなければ元が取れない*4、ということだ。

まあただ、いくら定期代が高いとはいっても、月に34回ということは、17日間使えば良いということだ。平日毎日学校に通う真面目な学生ならいざ知らず、週に1日くらいは休んでしまうちょっとはっちゃけた大学生でも、元は取れるのではないか? と思うだろう。


しかしそうはいかないのである。なぜなら、SuicaPASMOで運賃を支払うとき、「バス利用特典サービス(バス特)」が適用されているからだ。

バス特とは

定期券を使わず、ICカードでバスに乗っている人は気付いているかもしれないが、(バス特適用バスでの)バス利用額が一定額になると、「バスチケット」というクーポンが自動的に付き、次回利用時に勝手に充当される。これがバス特である。
ちなみに、神奈中ウェブサイトでの説明はこうなっている:払い戻し | 乗車券・定期券 | バス情報 | 利用者の皆さまへ | 神奈川中央交通JPEGの画像をそのまま貼りつけているため、細かいところが読みづらいことこの上ない。が、概要は上で述べている通りである。

さてここでリンク先の「特典バスチケットご提供額とご利用可能額」画像の「ICカードでの支払い額累計(バス利用累計)」欄を見てほしい。7000円と書かれている段があるので、その行を見ていくと・・・ 「特典バスチケット 累計額(バス利用お得額)」は「1200円分」と書かれている! これはつまり、7000円を払うと8200円分乗れる、ということなのである*5


私が紙と鉛筆を用いて計算したところ、39回の乗車は7180円の支払いで行うことができ、40回目までだと7210円かかる*6ため、通学3ヶ月定期の月約7183円を超える。

つまり、月に40回バスに乗らないのであれば、定期など買わずICカードで何も考えず払っておけば良いのである。

伏兵の回数券

と、ここで終わるなら何も基礎データで回数券の情報を事細かに記載をしなくても良いのである。 さきほどリンク先で誰も見なかっただろう注意書きにこうある。

10,000バスポイントを越えた場合または翌月になった場合は、新たに0バスポイントから記録されます。

そう、いくらバスポイントを貯めたところで、月が変わるとチャラになってしまうのだ。

6回ないし5回の乗車ごとにチケットが付くとはいえ、その「端数」も漫然とICカードで210円ずつ払うのはもったいない。そこで出てくるのが回数券だ。

この回数券、使っている利用者を(私の他に)ほとんど見たことがないが、それもそのはず、ほとんど案内されておらず、また少し煩雑なのだ。

なにしろ紙の束になっていて、ミシン目が付いているもののいちいち切り離して運賃箱に入れなければならないので、ICカード、あるいは現金に比べても手間はかかる。

ただ3000円回数券は12%、1000円回数券はそれぞれ10%お得分が付いている*7ので、月31円得したいなら*8回数券を買うべきである。


・・・と、ここまでの回数券の話は冗談だが*9、回数券が実際に役立つ人はいる。
それは、月に15回までしかバスに乗らない人 だ。

実際に、普段は自転車通学で雨の日だけバスに乗る人はけっこういる。そんな人は、1回につき絶対に10円以上安くなるのだから、回数券を財布に入れていても良いのでは? ・・・月の後半が毎日雨だったらあきらめるしかないが、なに、体力的には快適なバス通学を現金に比べ10%割安でできるなら、毎回の回数券支払いなど楽なものではないだろうか。

まとめ

長々と書いてきたが、まとめると、

「神奈中は21日間以上通学すると決まっている月でなければ定期を買ってはいけない*10
「支払いはICカードで」
「月にバス通学が7日以下なら、回数券を検討してみてもよい」

ということであった。

神奈中 is ○○。

余談

数年前までバスカードが利用できたようなのだが、バスカードは1000円-1100円分、3000円-3360円分 の他に、5000円-5850円分 というのがある。
これは割引率いいし、そもそもバスカードなら券を切る手間も運賃箱に押し込む手間も省けたのに・・・

スペース上、ICカードリーダとバスカードリーダを同時には置けない(のでバスカード利用を廃止した)のだろうが、残念だ。 これがイオカードと同じ悪夢・・・(※筆者は小学生のころ「イオカード」で自動改札機を通るのが小さな夢*11だったのだが、小6くらいの時からSuica導入促進のためイオカードは自動改札機通れないようになってしまった)

余談2

今回通学を対象に計算を出しているが、通学用定期より高い通勤用定期はどうなのか?と思う向きがあるかもしれない。実はこれがおもしろいことになっている。

記載したように、通勤定期は3ヶ月定期で月平均約8977円、1ヶ月定期だと9450円である。これはバス特適用表*12と照らし合わせると、それぞれ50回乗車と53回乗車でやっと元が取れるのだ。

つまり週休2日だとどうやっても損で、土曜日休みでなくても、4日間祝日でもあろうものなら日曜休日出勤をしないと絶対に割に合わない という仕様というわけだ(あ、運賃2倍の「深夜バス」があった。でも定期で賄えるのは通常料金分、つまりこの区間の場合210円は実費)。



神奈中は月に32日働く地域の皆様を応援しています*13

*1:24系統も25系統も結果は同じです

*2:区間が指定されているわけではないので、「金券」と呼んだ方が正しい

*3:ちなみに、長距離になればなるほど定期券の割引率も高くなっている。新宿-鶴川なら15回、新宿-湘南台なら12回、新宿-小田原なら9回といった具合だ

*4:ちゃんと計算すると、通学3ヶ月定期でも35回月に乗らないと元が取れない。通学1ヶ月定期に至っては36回分の値段だ

*5:厳密には、7000円きっかりを払うということは210円区間の往復では起こらない

*6:39回目で累計バスポイントが7000円に達し、40回目は付与額の180円を引き30円で乗車できる

*7:「割引率」で考えると10.0%強と9%強

*8:月40回、42回、44回、46回乗車するとき、「端数」はそれぞれ1回、3回、0回、2回発生するので、平均して315円分を回数券で払うとすると・・・

*9:なお筆者は実際に「端数回」だけを回数券で払うという所業を実際にやったことがある

*10:前述したように、3ヶ月定期なら月40回で元が取れるが、3ヶ月連続して祝日・休講日が平均3日以内というのはまずないので、買うとしても1ヶ月定期であり、そうなると42回乗車しないと元が取れない

*11:小児用イオカードというのはない

*12:紙と鉛筆で自作した

*13:なんでこんなバカな定期代の設定になっているかというと、おそらくバス特導入前のをそのまま引き継いでいるからだろう。しかしこんなのではますます自家用車が使われてしまうぞ、"グループの総合力を生かして地域に貢献し続け"る神奈川中央交通さんよ